アイスではなくジュース
スーパーなどでもよく見かけるポリエチレン製のチューブ容器に入ったあのジュースを固めたポッキンアイス。ご家庭で冷凍庫で凍らせて半分に折って食べた経験があるのではないでしょうか。「チューペット」「チューチュー」「チュッチュ」「ポッキンアイス」「パッキン」「カンカン」など全国各地で呼び名が異なります。正式名は「ポリエチレン詰清涼飲料(ポリエチレンヅメセイリョウインリョウ)」。通称は「ポリジュース」「棒ジュース」「ポリドリンク」など。そう、アイスではなく飲料(ジュース)なのです。昔は駄菓子屋などで販売されることが多く、子供向けに夏場は凍らせて販売したこと、また家庭でも凍らせて食べていたことから、いつのまにか「アイス」として定着しました。駄菓子屋でよく食べた「すもも漬け」、「あんずボー」、「ひねひね棒ゼリー」などと同じ立ち位置です。実際、駄菓子屋では何でも凍らせて販売していました。笑
前田産業のチューペット
ポリエチレン詰清涼飲料の登場は1960年代以降。同カテゴリで一番有名な商品は1975年に発売された前田産業(大阪)の「チューペット」。テレビCMを放映(東海・関西・関東)していたことから数あるポリエチレン詰清涼飲料のなかでも群を抜いて知名度は高かった。しかし2009年に製造を中止。ニュースでも話題になりましたね。
各地で呼び名が違う理由
何故全国各地で呼び名が異なるのでしょうか。まず理由のひとつとして、元々10本ほどまとめてパッケージされているものを駄菓子屋などでバラ売りで販売していたため、正式名がわからず、イメージで呼んでいた人が多かった。もうひとつの理由としては、全国各地の中小企業が製造&販売しているため種類が多く、ポリエチレン詰清涼飲料といえばこの商品!という突出した商品が無いこと。その中でも知名度が高い商品といえば強いて言えばやはり前田産業の「チューペット」になります。
くびれのある形状
真ん中にくびれがあります。このくびれがあることで、包丁を使わずに折って食べられることができ、1本を平等に分けることもできます。しかし上部の“つまみ”のある方が、ちょっとお得な感じがするので結局ジャンケンなどでどちらを食べるかを決めていたという思い出があります。
大企業は製造できない
ポリエチレン詰清涼飲料は大企業では製造できません。これは中小企業の事業活動を保護し、権益を守ることを目的とされ「中小企業分野調整法」(中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律)という法律で定められています。
アイスとは似て非なる者たち
その昔、駄菓子屋のアイスケースにはアイスの隣に必ずと言っていいほどポリエチレン詰清涼飲料を凍らせたものが並んでいました。しかしアイスクリーム業界ではこういった状況を好意的には思っていなかったようです。理由は常温液状のポリ飲料をそのままアイスのショーケースに入れると庫内の温度が上昇しアイスクリームの劣化につながってしまうというもの。詳しくは拙著「日本懐かしアイス大全」(辰巳出版)アイスとは似て非なる者たち~はた迷惑なポリ飲料~(P.45)をご参照ください。